池袋西口公園野外劇場の新たな門出を祝う『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』

池袋西口公園に新たに完成した野外劇場=池袋西口公園 野外劇場のこけら落とし公演として、宮城聰の代表作の一つ『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』が豊島区バージョンとして、2019年11月23日(土・祝)に上演される。

古代インドの国民的大叙事詩のなかで最も美しいロマンスといわれる『ナラ王物語』を絢爛豪華な舞台絵巻に昇華させた今作は、新しい野外劇の門出にふさわしい華やかな祝祭劇だ。

公演に先立ち、ゲネプロ(総通し稽古)が行われた。その模様をお伝えする。
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
《あらすじ》
その美しさで神々をも虜にするダマヤンティ姫が夫に選んだのは、人間の子・ナラ王だった。その結婚を妬んだ悪魔カリの呪いによって、ナラ王は弟との賭博に負け国を手放すことになる。落ちのびていく夫に連れ添おうとしたダマヤンティ。だが疲れて眠っている間に、彼女の衣の切れ端を持ってナラは去る。夫を捜して森をさまようダマヤンティを様々な困難が襲う。行く先々で危機を乗り越えた彼女はやがて父親の治める国へ。一方ナラも数奇な運命を経てその国にたどり着く。果たして夫婦は再会し、国を取り戻すことが出来るのか…。 『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ

演出の宮城聰が率いる劇団ク・ナウカで2003年に初演以降、国内外で繰り返し上演されてきた宮城の代表作の一つだ。客席を360度ぐるりと取り囲い込む円形舞台は、会場となった池袋西口公園野外劇場の頭上にある円形状のシンボル「グローバルリング」に沿うような形で設置されている。この日はあいにくの悪天候だったが、出演者たちは降りしきる雨に負けじと円形舞台を走り回ったり飛び回ったり、その肉体を生き生きと弾ませた。
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ

ク・ナウカ時代以降の多くの宮城作品の特徴は「語る」俳優と「動く」俳優が分かれていることで、この作品も例外ではない。つまり、登場人物は二人一役で演じられる、いわば文楽のような形を取っているのだ。ここに生演奏が加わることで、より一層ダイナミズムが感じられる舞台になっている。阿部一徳の重厚な語り、ダヤマンティ姫を演じる美加理の神々しさ、生演奏が刻むリズムが生み出すグルーヴ感により、舞台の世界は豊かに展開していく。
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ

「インドの叙事詩を平安時代の絵巻物として舞台上に描き出す」というコンセプトの作品を、池袋の野外劇場で上演するという状況がこれまでにない『マハーバーラタ』の世界を浮かび上がらせる。神話的叙事詩の作品世界と、出演者の背後に見える現代の建造物や街の喧騒との対比が趣深い。時代も国も虚実も飛び越え、繁華街・池袋をさまようナラ王とダヤマンティ姫の姿は、ロマンチックで美しいだけの愛の物語ではない、そこに猥雑さも加味されることにより、まさしく「グローバル」を体現しているといえよう。2014年には世界最高峰の演劇の祭典「アヴィニョン演劇祭」に招聘され、ブルボン石切場で上演され絶賛されたこの作品の、場所を味方につける普遍性を改めて示した。
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ

物語のクライマックスで、「語り」と「動き」と「音楽」が三位一体となって一気に高揚していく様は、この物語の祝祭性が顕著になり会場全体を包み込む。演劇とは、時代を映す鏡のような役割も持っている。野外劇場で池袋の街を肌で感じながらこの舞台を見た観客の心には何が映るのだろうか。こけら落とし公演によって“祝福”されたこの野外劇場の今後に期待したい。
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ
『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』ゲネプロ

取材・文・撮影=久田絢子

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